はじめに
「とりあえずインデックスファンドを積み立てておけば大丈夫」。
この言葉を、どれだけ多くの場所で見聞きしただろうか。金融系YouTuber、マネー雑誌、SNSの投資クラスタ。あらゆるところで、インデックス投資は「正解」として語られている。
私自身、インデックス投資を否定するつもりはない。20年以上相場に向き合ってきた経験から言えば、個人投資家にとって合理的な選択肢の一つであることは間違いない。
しかし、「思考停止の積立」が本当に安全かと問われれば、私の答えは明確だ。
安全ではない。
今日は、インデックス投資の「語られない部分」について書く。

1. 「長期なら必ず上がる」という神話
インデックス投資を勧める人間が必ず持ち出すのが、過去のチャートだ。
「S&P500は過去30年で○倍になった」「15年以上保有すれば元本割れしたケースはない」。
事実だ。過去のデータを見れば、確かにそうなっている。
だが、ここに落とし穴がある。
過去のリターンは、未来を保証しない。
これは投資の世界で最も基本的な原則のはずだが、インデックス投資を語る文脈ではなぜか忘れ去られる。
過去30年の米国株のリターンには、冷戦終結後のグローバリゼーション、IT革命、量的緩和という歴史的な追い風があった。これと同じ条件が今後30年続く保証はどこにもない。
2. 「何を積み立てるか」を考えていない人が多すぎる
インデックスファンドと一口に言っても、中身は全く違う。
S&P500に連動するファンド。全世界株式のファンド。日経225のファンド。
「インデックス投資をしています」と言う人に「何のインデックスですか?」と聞くと、答えられない人が意外に多い。
特に気になるのは、全世界株式ファンドの中身だ。「全世界に分散しているから安心」と思っている人が多いが、実態はどうか。
時価総額加重平均で構成されている以上、全世界株式ファンドの6割以上は米国株だ。「全世界に分散」と言いながら、実質的には米国経済に大きく依存している。
分散しているつもりで、していない。これが現実だ。
3. 積立を「やめる時」のことを考えていない
積み立てる方法は、あちこちで語られている。
だが、取り崩す方法を語る人は極端に少ない。
65歳で退職して、積み立てたインデックスファンドを取り崩し始める。そのタイミングでリーマンショック級の暴落が来たらどうなるか。
「シークエンス・オブ・リターンズ・リスク」と呼ばれるものだ。
同じ平均リターンでも、取り崩し初期に暴落が来ると、資産の減少スピードが加速する。回復を待つ間にも生活費として取り崩し続けるからだ。
積立期間中は「暴落はバーゲンセール」と言えるが、取り崩し期間中の暴落は、単なる資産の毀損だ。
この問題に対する解答を持たずに「とりあえず積み立てる」のは、出口のない迷路に入るのと同じだ。
4. コストの問題は解決されたのか
「インデックスファンドの信託報酬は低い」。確かにその通りだ。
年0.1%を切るファンドも珍しくない。アクティブファンドの1〜2%と比べれば圧倒的に低い。
しかし、信託報酬だけがコストではない。
隠れコスト──売買委託手数料、監査費用、そしてベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)。これらを含めた実質コストは、信託報酬だけを見ていてはわからない。
運用報告書を読んだことがあるだろうか。読んだことがない人が大半だろう。
自分の金がどう運用されているか、年に一度くらいは確認してほしい。

5. 私の結論
インデックス投資は、優れた投資手法の一つだ。それは否定しない。
だが、「思考停止で積み立てればOK」という態度は、投資ではない。怠慢だ。
最低限、以下のことは理解した上で積み立ててほしい。
- 自分が何のインデックスに投資しているのか
- そのインデックスの構成比率はどうなっているのか
- 出口戦略をどう考えているのか
- 暴落時に本当にホールドし続けられるのか
「何も考えなくていい投資」など、この世に存在しない。
楽をしたいなら、せめて楽をするための勉強はしろ。それが、20年相場を見てきた私の、率直な意見だ。
※本記事は個人の見解であり、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。